~ 日本経済新聞 2013年1月21日 ~
年末年始にお酒をかなり飲んだり、甘い物を食べすぎたりした人も多いはずだ。飲み過ぎや食べ過ぎを重ねると、肝臓に中性脂肪が必要以上にたまる「脂肪肝」が起こりやすくなる。脂肪肝になると肝がんや脳梗塞、心筋梗塞などのリスクが高まることが知られている。たまに羽目をはずすことがあってもよいが、日ごろの生活ではなるべく節制することが大切だ。
奈良県に住む60代の男性Aさんは、若いときから酒をかなり飲む方だった。毎日のように晩酌をたしなんでいたが、全身がむくんでしまう症状が表れた。そこで奈良県立医科大学付属病院を受診すると、入院することに。検査では全身のむくみのほかに、目の白い部分が黄色くなる黄疸(おうだん)がみられ、腹部にも水がたまっていた。
■自覚症状ほぼなし
診察した同大の福井博教授は、肝機能が低下していたことなどからアルコール性の脂肪肝が進み肝障害になったと判断。薬剤を投与し、むくみを解消した。数日後には衰えていた食欲も回復した。
Aさんは入院を機に、禁酒を実施した。退院して1年ほどたった今は肝機能の状態を示す数値が正常に戻った。黄疸などの症状も起きていない。ただ、肝臓の一部は細胞が破壊され肝硬変となっており、今後も禁酒を守っていくと福井教授に誓っている。
脂肪肝は中性脂肪が肝臓にたまっている状態だ。肝臓には通常でも中性脂肪があるが、必要以上たまってしまうと脂肪肝と診断される。この状態を放置しておくと、肝炎を発症し肝機能が下がる。さらに肝硬変、肝がんなど重い病気に進む危険性が高まる。
やっかいなのは脂肪肝になっても自覚症状がほとんどないこと。脂肪肝の段階でむくみやだるさ、食欲不振などを訴える例は少なく、健康診断時の血液検査などで分かるケースが多いという。脂肪肝はAさんのようなアルコールが原因となるタイプと、非アルコールタイプがある。
アルコール性肝硬変の患者の肝臓(左側部分)。萎縮して表面にも凹凸がある(奈良県立医科大学の福井教授提供)
アルコールを摂取すると、肝臓で分解され「アセトアルデヒド」という物質ができる。また「エンドトキシン」という腸内細菌が腸管を通って肝臓に達しやすくなる。「この2つが引き金となり、肝臓で免疫過剰などの反応が起こり、炎症や細胞の壊死(えし)などをもたらす」と福井教授は解説する。アルコール性の脂肪肝から炎症を起こす人は国内に500万人以上いるとみられている。
対策は深刻な病気になる前に飲酒量を減らすことだ。肝機能を示す代表的な「γ―GTP」という数値は、禁酒して2週間もすればかなり改善するという。ただ、お酒を控えるのが良いと頭では分かっているものの、なかなか実行が難しい人も多い。福井教授は「禁酒して体の調子が良くなると大量に飲んでしまい、また悪化するという繰り返しが多い。摂取量を減らすよう心がけるのが現実的だ」と助言する。
https://www.sakiyama-dc.jp/
練馬区・杉並区の歯医者さん「さきやま歯科クリニック」 院長 崎山 悠介