☆ 北海道新聞 (2012/03/21) ☆
虫歯になったり、歯周病にかかったりと、妊娠に伴い女性の口内環境は悪くなりがち。歯周病が早産のリスクを高めるともいわれており、妊婦の歯の健康は重要な問題だ。札幌市中央区の「ピュアスマイル レディデンタルクリニック」では、妊婦自身と生まれてくる子供のための「マタニティー歯科」に取り組んでいる。(西村章)
歯周病感染、早産の原因に
「赤ちゃんに栄養を取られて歯が弱くなった」―よく聞く話だが、同クリニックの佐藤聖子院長は「それは大きな間違い」と言う。
妊娠するとつわりで歯磨きができなくなったり、嘔吐(おうと)物の酸の影響で口の中は歯が溶けやすい環境となる。また、女性ホルモンの分泌が増えると歯周病菌が活発になり、歯周病が悪化。歯肉が健康な人でも腫れてくる。さらに、歯周病菌の感染で起こる免疫反応で放出される炎症性物質などにより子宮の収縮が促され、早産や低体重児出産の原因となるともいわれている。
ただ、妊娠中は処方できる薬や行える治療にも制約がある。また、治療が胎児に影響しないか不安を感じて、歯科受診をためらう女性も多い。
佐藤院長は「妊娠した女性も安心して歯科治療を受けてもらいたい」と、母校である日本歯科大の付属病院(東京)が2010年に大学病院で初めて開設した「マタニティ歯科外来」での検診や治療のシステムを取り入れ、診療を行っている。
歯磨き指導で清潔に/虫歯予防に専用ガム
同クリニックでは、まず口の中の状態をチェック。虫歯や歯周病のない人でも汚れが残っていることが多いため、汚れを取り、歯磨きの方法を指導する。希望者には唾液検査も行い、虫歯菌の量など虫歯になるリスクの高さも調べる。
痛みなど症状がある場合、治療は妊娠の経過に応じた対応が必要となる。安定期(16週以降)より前ならば、抜歯などは避けて応急処置にとどめつつ、歯垢(しこう)や歯石を取り除いて口内環境を良くする。安定期に入ったら抜歯や神経の処置など麻酔が必要な治療も行える。鎮痛薬などの薬は安全性の高いものを必要最小限で使う。
こうしたケアとともに、佐藤院長が勧めるのが「マイナス1歳からの虫歯予防」。虫歯菌は口移しや箸の共用などで親から赤ちゃんに感染する。このため、赤ちゃんの歯を守るには、妊娠中から母親の虫歯菌に対処しようという意味だ。
具体的には、甘味料としてキシリトールを100%配合した、一般には販売されていない歯科専用のガムを用いる。キシリトールは歯の修復(再石灰化)を促進するとともに、虫歯菌に、虫歯の原因となる酸と歯垢を作らせず、虫歯菌を弱らせる効果がある。また、虫歯菌には"善玉"と"悪玉"があるが、歯からはがれやすいサラサラした歯垢を作る、虫歯リスクの低い善玉菌の割合を増やす働きもあるという。
そこで妊娠6カ月~出産後9カ月の間、キシリトールガムを1日3~4粒ずつかむ。「この方法は無理なく実践できるのがメリット」と佐藤院長。母親の口の中は善玉菌が増え、感染しにくくなっているため、赤ちゃんにうつる時期を大きく遅らせることができ、虫歯菌に弱い生えたての歯を守ることができるという。
ただ、キシリトールガムが効果を発揮できるのは、歯磨きなど日頃のケアがきちんとなされていることが大前提となる。佐藤院長は「妊娠したら産婦人科に行くのが常識なのと同じように、歯科医院で口の中のチェックとケアを受けてほしい」と話している。
https://www.sakiyama-dc.jp/
練馬区・杉並区の歯医者さん「さきやま歯科クリニック」 院長 崎山 悠介